アール・ヌーヴォー期ルグラの作品です。
ルグラの非常に珍しい作品です。金彩や赤絵でアネモネの花や紋章、"Theleme"といった装飾が施されています。1900と描かれているとおり、1900年に製造されたものと思われます。ガレにもみられるような当時の琥珀色のガラスがとても素敵です。
"Theleme"(テレーム、英語では"Therema(セレマ)")とは「汝の意志することを行え」という哲学の言葉を意味します。もともとは聖書のなかに出てきたようで、その後いろいろな人物や宗教によって様々に解釈され広まっていきました。
ルグラの作品を集めた『Legras』という書籍に同じ花瓶が掲載されています。こちらは1900ではなく1899とあり、おそらく数年に渡って製造されたのではないかと思われます。ルグラの作品としてはかなり珍しいデザインであり、年号が入っていることからもおそらく何からの意図をもって製造されたのではないでしょうか。
【ルグラ / Legras】
フランソワ=テオドール・ルグラ(François-Théodore Legras)による工房。1839年に生まれたルグラは20歳のときにヴォージュにあるClaireyというガラス工場に入る。その後、パリの小さな工房に移る。そして1864年サン・ドニガラス工場(La verrerie de la Plaine Saint-Denis)に雇われる。2年後には工場長となる。1873年には甥のシャルル・ルグラ(Charle),1878年には同じく甥のテオドール(Théodore)が職人として加わる。シャルルは1868年にパリ万博で金賞を受賞している。1883年社名をLegras&Cieとする。ただ名称はサン・ドニを引き継ぎVerrerie et Cristallerie de Saint-Denisとされた。実際にルグラ(Legras&Cie)のサインが使われるようになったのは1894年からである。ルグラは1888年にバルセロナ万博金賞、1889年と1900年のパリ万博でグランプリ、その後の万博では審査員を務めるなど評価は非常に高かった。F.T.ルグラは1889年にシュヴァリエ章、1906年にはフランス最高勲章であるレジオン・ドヌール勲章を授与されている。工房も1000人を超える職人がいるなど、当時のフランスガラス界において相当の勢いを持った工房であったことが推察される。
年代 : 1900年
サイン: 底に"82"の文字
状態 : 良好(内側に経年の汚れがあります)
サイズ: 高さ 28cm