アール・ヌーヴォー期に活躍したフランスのガラス工房、ルグラ（Legras)のボウルです。
地にジブレ加工（霧氷文様）を施し、そこにルグラの得意とするエナメルでモザイク模様に装飾された作品です。
デザインとしてはアール・ヌーヴォーより、アール・デコの影響を受けたルグラ後期の珍しい作品です。
専門書『Legras』(2012)には「"グッピー"（アール・デコを代表するエナメル工芸家マルセル・グッピー）と言われたシリーズ」と紹介されています。マルセル・グッピーは1910代よりエナメル彩を用いた優れた作品を製造し、ガラス工芸界に多大な影響を与えました。実はルグラはグッピーとの間には関係がありました。ルグラの下で修業をしていたオーギュスト・ハイリゲンシュタイン（Auguste Heiligenstein)は、その後、バカラそしてマルセル・グッピーのいたルアールの下で働いていました。そして1926年から1933年までルグラに戻り、デザイナーとして働き、その当時のルグラの製品の大半をデザインしていたとされています。アール・ヌーヴォーの衰えつつあった勢いからアール・デコを取り入れた時期です。
こちらのボウルもそのオーギュスト・ハイリンゲンシュタインによってデザインされたものと考えられます。
【ルグラ / Legras】
フランソワ=テオドール・ルグラ(François-Théodore Legras)による工房。1839年に生まれたルグラは20歳のときにヴォージュにあるClaireyというガラス工場に入る。そして1864年サン・ドニガラス工場(La verrerie de la Plaine Saint-Denis)に雇われ、2年後には工場長となる。1873年には甥のシャルル・ルグラ(Charle),1878年には同じく甥のテオドール(Théodore)が職人として加わる。シャルルは1868年にパリ万博で金賞を受賞している。1883年社名をLegras&Cieとする。ただ名称はサン・ドニを引き継ぎVerrerie et Cristallerie de Saint-Denisとされた。実際にルグラ(Legras&Cie)のサインが使われるようになったのは1894年からである。ルグラは1888年にバルセロナ万博金賞、1889年と1900年のパリ万博でグランプリ、その後の万博では審査員を務めるなど評価は非常に高かった。
年代 ： 1920年代後半
刻印 ： Legras
状態 ： 縁に小チップあり（最後の画像）、製造時の色飛びあり
サイズ： 直径 12�僉々發機�5.5��
