のちルイ18世としてフランス国王となるルイ・スタニスラス・グザヴィエ(当時プロヴァンス伯爵、ルイ16世の弟)が庇護した窯、クリニャンクール窯のカップ&ソーサーです。
グリザイユによってパンジーが写実的に手彩で描かれたお品。上部には金彩で「A MOI」の文字があり、これは当時流行した判じ絵( Rébus)で、パンジーのフランス語「pensée」にはもともと「〜のことを想う」という意味があり、「pensée a moi」で「私のことを想って」という暗号になります。
このような判じ絵を磁器に取り入れた例として、やはり同じ1780年代にセーブルや他のパリ窯でみられます。また、この時代のパンジーは現代のパンジーではなく(現代パンジーと呼ばれるものは1800年初頭に誕生した交配種がもと)、野生のヴィオラ・トリコロールと考えられます。
クリニャンクール窯は当時のパリにあった窯々でも実力のあった工房で、特にこのようなグリザイユ装飾を得意としていました。このカップの絵もよく描けております。
参考文献 Bibliography
スイス、アリアナ美術館に同形状、同縁金彩装飾のカップ&ソーサー所蔵(https://www.musee-ariana.ch/collections/oeuvre/tasse-et-soucoupe/ar-2020-082)
【クリニャンクール窯 / Manufacture de porcelaine de Clignancourt】
1767年頃、ピエール・ドリュエルにより開窯。1775年、プロヴァンス伯ルイ・スタニスラス・グザヴィエ(ルイ16世の弟、のちルイ18世)の庇護を受け「王弟殿下(ムッシュー)の工房」と称し、そのイニシャル「LSX」のモノグラムを窯印に使用。1784年に色絵の生産を許可された窯の1つであるが、それ以前から多色の彩色を使用している。セーヴルと競い合った工房で、技術の高い製品を制作した。フランス革命が勃発すると、1792年に Alexandre Moitteに譲渡。1799年廃窯。その後復活の試みもあったが失敗し、建物の一部は現在にも残る。
年代/PERIOD | 1780年代頃 |
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刻印 /MARK | LSXのモノグラムマーク、ムッシューを示すMのマーク |
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状態/CONDITION | 良好(多少金彩擦れ、製造時のムラ(黒点等)あり)
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サイズ/SIZE | カップ 直径6cm 高さ 5.9cm(いずれもハンドル含まず) ソーサー 直径 12.5cm |
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