フランスの工房を示すホールマークは1797年以降、菱形の刻印が使われています。シルバープレートのものには四角の刻印が使われる場合が多いです。
フランスの銀製品には通常、銀を証明する刻印(ミネルヴァなど)と工房の刻印の2つが押されます。
ここでは純銀(シルバー)のものを中心に紹介します。書いてある年号はあくまでも刻印の登録年によるものです(実際の活動年と異なることは多々あります)。1904年〜1920年
フランスでも有力であったオルフェーヴルとして知られる。1802年(1804年とも),Antoine-Vital Cardeilhacがパリに移住し制作を始めた。最初の刻印が登録されたのは1817年であった。息子のArmand-Edouard Cardeilhacは1851年に引き継ぎ、1885年にはErnest Cardeilhac(1851-1904)によって引き継がれ、1904年まで「E.C」の刻印が使用された。Ernestは大きな成功を収め、特にアール・ヌーヴォー期にはLucien Bonvalletと協力し、セーヴルやエミール・ガレのマウントなどを制作し、ヌーヴォーを代表する工芸家として活躍した。1904年にAmelieが引き継ぎ、「A.C」刻印も合わせて登録し、1920年まで使用された。その後は息子のJacquesとPierreによって1951年にクリストフルに買収されるまで続いた。カルディヤックは優れた作品を多く残し、1878年のパリ万博では6個の金賞を受賞するなど輝かしいこ功績を残したフランスを代表する工房であった。
1907年〜1920年
Gabert&Conreauの工房を引き継ぐ。※Henri Gabert参照
1883年〜1911年
銀工房を営むAlphonse-Edouard Debainの息子として生まれ、Phillippe Berthier工房(1841年創業)に入り成功を収める。1883年より自身の名にて活動、1889年パリ万博では金賞受賞、1900年パリ万博では審査員を務めるなどその名を高めていった。1911年まで活動。
※Debain工房
Francois-Alphonse Debainが1846年頃より活動。1864年に息子のAlphonse-Edouard DebainとLouis-Frederic Flamantに引き継がれた(Debain & Flamant、1864年〜1800年)。その後、会社はFlamantが相続し、Flamant & Filsとして活動した(〜1891年)。
非常に似たマークでAlphonse Dutac工房がある。同じように鳥が真ん中にデザインされているが、首の長さが短い。
1920年〜1931年頃
「ARD」の刻印。
1891年〜1898年
A.TORTEZの刻印。1898年にEdmond Molleに引き継がれた。
1824-1844年
のちに有力工房となるVictor Boivinへとつながる工房。1844年から1859年にNicolas Vautrin、そしてその後Victor Boivinの父親であるJules Boivinへと渡った。
1905年〜1923年
1905年7月28に登録。カトラリーやガラスのマウントなどを制作した。
1838年〜1865年
1806年に生まれる。1831年よりパリのシテ島にて活動、スプーンの製造に特化し1866年まで活動、息子の Henri Charles Louis Cottatに引き継がれ1876年まで続いた。
E
1900年代初頭
1898年〜1919年
銀食器など優れた製品を製造した。前身はAlexandre Tortez(1891〜1898)。
1857年〜
フランスだけでなく世界最高のブランドとして現在も君臨しているオルフェーヴル。 Emile Puiforcatによって1820年創業された。 この刻印が登録されたのは1857年11月3日である。Emileは1883年に死去したが、この刻印は使用し続けた。現在はエルメスの傘下にある。
1900年代前半
1847年〜1865年
1835年に最初の刻印を登録している。この刻印は1847年に登録された。他にもいくつかの刻印を使用している。
1901年〜1906年
1882年より活動していたHenry GabertがH.Conreauとともに1901年に開いた工房で、1906年まで続いた。工房はAlbert Deflonに引き継がれた。
1868年〜
19世紀の有力工房。ナイフ制作で有力だったCamille Pagéと協力した制作も行い、1889年や1900年のパリ万博では審査員を務めた。
1896年〜1910年
前身はHenin&Vivier。
1861年、Thomas&Heninが最初の刻印を登録(〜1865年)。優れた銀食器を製造する。1865年、Henin&Freresによって引き継がれる(〜1872)。1872年より、Henin&Filsとなり銀食器を製造し続ける(〜1875)。1875年、Henin&Cieとなり成功を収める。1891年、Henin&Vivierとなり、その後再びHenin&Cieと名乗る(1896年)。
1895年〜1923年
Pierre Gavard(1836年〜1895年)の工房を継ぐ。
1882年〜1901年
1879年、Edouard ErnieとHenri Gabertが活動を始めた。1882年まで活動したのち、Henri Gabertは自身で活動を始めた。この刻印は1901年まで使用され、1901年からはGabert&Conreauとして1906年まで活動。この工房はAlbert Deflonに引き継がれ、その後も活躍した。
1884年〜1910年
Henri Chenailler工房(1864〜1884)年にて成功を収め、1884年より工房を引き継ぎ自身にて活動。1910年にSoufflot & Cieとなったが同年にOlier & Caronによって買収された(〜1936年)。
1891年〜1896年
1896年よりHenin&Cieとなる。
1852年〜1870年
1836年〜1847年
François Pamphile JOZANはオルレアン朝に活躍した工房。細かな細工を施した製品を製造した。
1849年〜
19世紀半ばに活動。
1843年〜
Louis-Alexandre Bruneauは1823年,1834年,1843年と3つの刻印を登録しており、1820年代には活動していた。カトラリーも制作したが、シールなどの文房具にも力を注いぎ、優れた製品を制作した。
1889年〜1928年
工房自体はLouisの親であるCharles-Alfred Coignetが1865年に開業(Coignet & Cie)。そこでLouisが活躍、1889年にLouis自身の刻印を登録した。1893年に制作場所を変更、1928年まで活動した(Coignet & Fils)。1905年のリエージュ万国博覧会で銀賞を受賞。
1881年〜1904年
1877年〜1897年
1877年より活動。「L'Escalier de Cristal」(1804年に創業し、エミール・ガレやウジェーヌ・ルソーといった一流の工芸家の作品を扱った高級小売店)に多く商品を納めた。1897年からはFrancois Labatと名前を変え、1920年まで続いた。
1875年〜
宝石商。
1872年〜1897年
1872年創業で、宝石商として現在まで続いている。
1956年〜
1690年創業。1797年、Jean-Claude Odiotによって刻印が登録される(〜1809)。1809年に、その息子が同じ名で登録をする(〜1826)。1826年、Charles-Nicolas Odiotによりこの刻印が登録される。1865年、Gustave Odiotが引き継ぎ1894年まで刻印は使用された。1894年から1906年の間は"PR Cie"のマークが使用された。1906年から1956年までは"O Bs"の刻印が使用された。 ナポレオン専属の銀職人もオディオから輩出されるなど格式が非常に高く、現在も続く。
1847年〜
1841年から1845年までは異なる刻印を使用。この刻印は1847年と1851年の2度にわたって登録をされている。Alphonse Debainが働いており、のちに買収され引き継がれた(Alphonse Debainが自身の刻印を使用し始めたのは1883年から)。
1886年〜1895年
18世紀末
1891年〜1912年
工房自体は1845年に設立された。Louis Ravinetが1882年に工房を買収、1891年にCharles d'EnfertとともにRavinet d'Enfertとして創業。1897年ブリュッセル万博では金賞を受賞。1912年にRavinet&Cieへと変更した。
1897年〜1926年
1872年生まれ。1897年、Leroy&Cieの著名な金銀細工師であるジュール・ピオー(Jules Piault)の事業を買収しスタートする。優れた技術を伴い、品質の高い製品を製造した。1900年のパリ万博では金賞を受賞。その後カルティエのサプライヤーとしても活躍し多くの名品を納め、さらに1925年のパリ万博では宝石商としてグランプリを受賞した。カルティエはロベールを長年支えていたが、経済的困難から1932年にカルティエに事業が引き継がれた。1941年死去。
1897年〜
Victor Boivinの父Jules Boivinから工房を引き継ぐ。父は1862年より小さな銀食器を優れた技術で制作していた。Victorがこの刻印を使用するようになったのは1897年からだが、それ以前から活動はしていた。Bovin家は高い評価を得ており、国際博覧会にて多くの賞を受賞した。兄弟には著名なジュエラーであるLouis Boivinがいる。
※年代等については不明確なところもあり、あくあでも参考となります。新しい情報やご意見ございましたら、お待ちしております。
>参考文献
『French Silver Cutlery』(Allan David/Faton/2007)
『Poincons d'argent』(Tardy/Editions r?・gionales de l'Ouest/2004)
など
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