ロブマイヤー創業当時、ボヘミアガラスは世界有数の産地として知られていました。現代では有名なバカラも当時は後れを取っており、ボヘミアガラスの品質に追いつくためにボヘミアから多くの技術者を招いていました。ロブマイヤーの創業者ヨーゼフ・ロブマイヤーも開店当初はボヘミアからガラスを輸入し販売していました。ロブマイヤーのガラスはボヘミアと同じカリ・クリスタル。それをさらに特殊な配合でより美しく仕上げています。初期の頃はカットは北ボヘミアの工房にて行われていました。また、ロブマイヤーと切り離せないのが南ボヘミアのマイヤーズ・ネッフェ(Meyr's Neffe)。1816年創業で、マイヤーズ・ネッフェはボヘミア南部にて活動していました。マイヤーズ・ネッフェで7つの工場を保持していたヴィルヘルム・クラーリク (Wilhelm Kralik)とロブマイヤー2代目ルードヴィヒ・ロブマイヤーの娘が結婚をしたことで、両社は親密な関係となりました。マイヤーズ・ネッフェはロブマイヤーと協力をし制作、1873年のウィーン万博では多大なる成功を収めました。
ロブマイヤーといえば優れたグラヴィール技術をまず思い浮かべるのではないかと思います。しかし、アンティークのロブマイヤーで本当に優れていたのはエナメル彩の作品でした。特に東洋、イスラム文様のデザインは非常に高い評価を得ており、アンティークロブマイヤーの真骨頂とも言える作品です。また日本でもよく見かけるアンティークロブマイヤーの定番でもあるエナメル彩による人物画も見事であり、人気があります。3代目シュテファン・ラートの時代になると流行が代わり、ヨーゼフ・ホフマンの協力などもあり作風は大きく変わります。現代でも以前のようなエナメル彩は製造されていません。
ボヘミアでは古くからグラヴィールの優れた製品が生産されてきました。ロブマイヤーもその流れを受けているだけではなく、そのグラヴィール技術をさらに極め、「光の彫刻」とまでよばれるようになりました。他のボヘミアガラスに比べ薄手で軽く、にも関わらず繊細なグラヴィールを施すには質の良いガラスと優れた技術がなせる業です。また、それを活かすためのカッティング技術も見事です。ロブマイヤーは創業時よりコパー(銅)ウィールが使用され、現代でもその技術は受け継がれています。1905年にシュテファン・ラートがデザインしたシェーンブルン(ドリンキング・サービスNO.231"Barock(バロック)"シリーズ)は現代でも製造され、世界中の人々を魅了しています。
初代ヨーゼフの跡を継いだのは、ヨーゼフ2世とルードヴィヒでした。ヨーゼフ2世は早くに死去してしまい、ロブマイヤーはルードヴィヒを中心に活動していきます。ロブマイヤーを発展させたのはルードヴィヒによる多大な功績によるものです。ウィーン応用博物館(MAK)への協力、万国博覧会での成功などロブマイヤーを世界的なブランドへ発展させました。アンティークでも人気の高い”ミラマーレ”など見事な作品をデザインしています。欧州で流行していたジャポニスムやアール・ヌーヴォー(ユーゲントシュティール)といった芸術運動とは一線を画していながら、常に最高のガラスを製造し続けた偉大なガラス工芸家でした。
ルードヴィヒの跡を継いだのは甥のシュテファン・ラートでした。ルードヴィヒの下で一緒に働きもしたシュテファン・ラートにとって、変化していく芸術運動に対応していくことが課題であり、それは移り変わりゆく時代との戦いでした。シュテファンはウィーン工房を設立したヨーゼフ・ホフマンと協力、新しいロブマイヤーの形を創り上げていきました。現代でも製造されている"B"シーリズは特に有名です。ロブマイヤーはシュテファンの時代も成功を収めました。しかし、ドイツがナチス政権となると、ユダヤ人と交流のあったシュテファンは退任を余儀なくされ、シュテファンはロブマイヤー社をハンス・ハラルト・ラートに譲り、自身はチェコのカメニツキー・シェノフの工場に移り、そこで指揮を執ることなりました。シュテファンがウィーンに戻ったのは13年後の1951年でした。その後も指導にあたり、多大なる功績を現代のロブマイヤーに伝えました。
← ロブマイヤーのカメニツキー・シェノフ(チェコ)の支店にて使用された1947年のカタログ。店名とともにシュテファン・ラートの名が刻まれている。ウィーンを離れざるを得なくなり、カメニツキー・シェノフにて活動をしていた時期のもの。シュテファン・ラート自身もデザイン、制作をした。
1792年 ヨーゼフ・ロブマイヤー(Josef Lobmeyr)生まれる。
1822年〜23年 ウィーンにガラス店を開く。当初はボヘミアガラスなど仕入れて販売。
1837年 スラヴォニアのオシエク(Osijek)にガラス工場を借りる(〜1849年)。
1840年頃 "Lobmeyr"の名でガラスの製造を始める。
1841年 スラヴォニアのズヴェチェヴォ(Zvecevo)にガラス工場を建てる。(〜1857年)
1848年 エジプト総督よりシャンデリアなどの注文が入る。
1851年 ヨーゼフ・ロブマイヤーの娘とマイヤーズ・ネッフェのヴィルヘルム・クラーリクが結婚。
1855年 ヨーぜフ・ロブマイヤー死去。息子のヨーゼフ2世とルードヴィヒ(Ludwig)が継ぐ。
1858年 ルードヴィヒはマイスターとなる。
1860年 社名をJ. & L. Lobmeyrとする。
1862年 ロンドン万博に出品。金メダルを受賞。
1864年 ヨーゼフ2世が死去。
1868年 Austrian Museum of Art and Industry(現ウィーン応用博物館(MAK))設立。ロブマイヤーも大きく関わり、今もロブマイヤーの製品や製作図など多くを所蔵している。
1869年 フランツヨーゼフ皇帝のためのセットを制作。
1876年 シュテファン・ラート(Stefan Rath)が生まれる。
1883年 トーマス・エジソンと協力をし、世界発の電気式シャンデリアを開発する。
1899年 ルードヴィヒがウィーン名誉市民に選ばれる。
1900年 パリ万博に出品。グランプリを受賞。
1905年 シュテファン・ラートがドリンキング・サービスNo.231"Baroque(バロック)"シリーズをデザイン(いわゆるシェーンブルン)。
1910年 シュテファン・ラートがドリンキングサービスNo.206"Maria Theresia"(マリア・テレジア)をデザイン。シュテファンがヨーゼフ・ホフマン(Josef Hoffmann)と交流を持つようになる。
1914年 ホフマンがデザインしたロブマイヤーの作品がケルンにおける展覧会にて発表される
1917年 ルードヴィヒが死去。ステファン・ラートが継ぐ(3代目)。
1922年 マイヤーズ・ネッフェがモーゼルに買収される。Karlsbbader Kristallglasfabriken A. G. Ludwig Moser & Sohne und Meyr's Neffe誕生。
1924年 シュテファン・ラートの息子ハンス・ハラルト・ハート(Hans Harald Rath)が事業に加わる。
1925年 パリ万博にてグランプリを受賞。
1938年 ナチス政権の影響で、シュテファン・ラートがオーストリアを離れ、チェコのカメニツキー・シェノフに移る。会社はハンス・ハラルト・ハートが継ぐ(4代目)。
1944年 戦争による被害を避けるため、スワロフスキーにシャンデリア工房を移す(ダニエル・スワロフスキーとの協力)。
1951年 シュテファン・ラート、ウィーンに戻る。ハンスの息子ハラルト・C・ラートが事業に加わる。
1960年 シュテファン・ラートが死去。
1966年 ニュー・メトロポリタン・オペラ(アメリカ)にシャンデリアを納める。
1968年 ハンス・ハラルト・ハートが死去。
1972年 ハンスの息子ヨハネス・ステファン・ラートが事業に加わる。
チェコのシャンデリアメーカーであるJos.Zahn&Co.を買収。
参考文献
・『別冊太陽 世紀末ウィーンの輝き ロブマイヤー・グラスの世界』(2002年、平凡社)
・『J. & L. Lobmeyr Zwischen Tradition Und Innovation』(2006年、Prestel Pub)
・『J. & L. Lobmeyr Zwischen Vision und Realitat』2010年,Prestel Pub)
・『LE GENIE VERRIER DE L'EUROPE』(1998年,Pierre Mardaga)
・『Lobmeyr Hells Glas und Klares Lichr』(1998年,bohlau)
・Lobmeyr HP(http://www.lobmeyr.at/)
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