西洋アンティーク 歴史と芸術のマリアージュ  | 銀座

知的財産権とアンティーク〜偽物との戦いと権利の保護〜

アンティークや骨董を扱う上で必要なのは目利きであることは言うまでもありません。特に本物か偽物かを見極めることは永遠の課題ともいえます。現代では日本でも知的財産への考えが深まっておりますが、かつては欧米に比べ知的財産への理解の薄く、日本は偽物が多く作られていました。一方、西洋では早い段階で知的財産をしっかりと守るという概念がありました。だから偽物がないというわけではありませんが、近代工芸でいえば、日本や中国骨董に比べるとその数は圧倒的に少ないといえると思います。偽物があっても日本や中国骨董ほど精巧でない場合が多いです。知的財産について、その過程を振り返ってみます。


イギリスの知的財産権保護

イギリスは早くから知的財産の保護を進めていました。


1449年 特許制度の開始

1624年 専売条例

1787年 意匠保護条例

1852年 特許庁設立、改正特許法←世界初ともいえる包括的近代特許法

1862年 商品標法←虚偽表示を禁止

1875年 商品登録法←先使用主義


上記は知的財産権に関わる主なイギリスの法律などです。日本では江戸時代まで知的財産の概念はほとんどなく、まともに知的財産権の法律ができたのも明治に入った1880年代であることを考えれば、いかに早い段階で知的財産権に対し高い意識があったのかが伺えます。

実際にアンティークに関わるものですと、例えば銀製品などのホールマークは顕著にイギリスらしさが表れています。13世紀に品質が法律で定められ、16世紀半ばにはホールマーク制度が確立しました。

磁器においても、おそらくイギリスで偽物の磁器をみたという例はほとんどないのではないかと思います。あるとすれば、磁器黎明期の作品(特にウースター)です。19世紀半ば以降はどの窯にもしっかりとした窯印がつけられていました。


レジストリーマーク

陶磁器に付けられたレジストリーマーク


フランスの知的財産権保護

西洋アンティーク陶磁器において、偽物が多いのがフランスのセーヴル(Sevres)です。出回っている95%以上は偽物といえるほどです。特にヴァンセンヌ窯や初期のセーヴルとして出回っている作品はほぼ偽物です。だからといって、フランスに知的財産権保護の概念がなかったというわけではありません。

特許でいえば1791年に最初の特許法が制定されています。1803年には法律で商標の盗用に罪を科し,1857年には世界初の商標法を制定しました。1860年には商標登録を開始し、クリスタルガラスブランドであるバカラが第一号として登録されています。その後もガラス作品には登録されたものには"Depose"の文字が書かれているものあります。イギリスほど厳格ではないが、しっかりと制度はあるのです。銀製品についても14世紀から刻印の使用例があり、その歴史も古いです。

しかし、前述のとおり、セーヴルなど一部のものは偽物が多くあります。セーヴル自体非常に高額であり、現代でもあるように、法を犯してまでもやる価値があったということでしょうか(というより、輸出向けだったのかセーヴルの偽物に関してはフランス国内よりアメリカなど海外に多くあります)。逆にセーヴルから陶磁器の様々な技法や製作法が各地へ波及しており、リモージュが流行したのももともとはセーヴルの技術等が伝わったからという面もあります。


depose

バカラの"DEPOSE"が刻印された作品


ドイツの知的財産権保護

ドイツでは1874年に商標保護法、1876年に意匠または模型の考案に関する法律、1877年に統一特許法と、1870年代にいっきに知的財産権保護の動きが高まりました。

ドイツの偽物といったら、やはりマイセンです。圧倒的な偽物の数があります。上記の知的財産権保護がされた1870年代以降、マイセンは実際に裁判をして偽物制作者と戦っています(黙認していた例もあるようですが)。1880年代に入ると、ドレスデンで絵付け工房が盛んになり、マイセンの作品の模倣で溢れかえりました。ドレスデンはマイセンの模倣で始まりましたが、中には優れた技術のものもあり、自身の窯印を使用していた工房も多くありました。ただ、中にはマイセンの窯印をそっくりそのまま使用する工房まで現れました。それに対し、マイセンは裁判で訴えていきました。訴えられた有名な工房はヘレナ・ヴォルフゾーンでマイセンがかつて使用していた"AR"のマークを使用していました。他にもマイセンはいくつか裁判を起こしています。ただそれでも偽物が出回るのは、フランスのセーヴルと同じく、マイセンは非常に高価であり、リスクよりも利益が勝つからと考えられます。

マイセン偽物マーク

マイセンの偽物マーク


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